2011年2月20日日曜日

ブラックキャビア ライトニングステークス2011


今年のグローバルスプリントチャレンジ第一戦であるクールモアライトニングステークス(豪G1 1000m)が昨日行われましたが、前評判ではやはりブラックキャビア(4、牝)が勝つとの予想が大半で、それに唯一ヘイリストがどこまで対抗できるかどうかというところでした。

結果は予想と人気通りブラックキャビアの圧勝で、ほとんどおわれるところなく最後はジョッキーのL.Nolenが手綱を抑える余裕さえ見せました。個人的には縁のあるスタチューの仔、ヘイリストに頑張ってほしかったのですが、なんとか2着は確保しましたもののブラックキャビアにはまったく敵いませんでした。

本当に何と言う強さでしょう!!現在スプリント部門でワールドランキング第1位のこの馬ですが調教師のP.Moody調教師はヨーロッパ遠征には興味を見せておらず(「来るならそっちから来い」といっています)、しばらくはオーストラリア国内にとどまってレースを続けそうです。

このブラックキャビアの父親は「ベルエスプリ」(Bel Esprit)。
2年ほど前にビクトリア州のエライザパークを訪ねた際拝見しましたが一言で言うと「黒いサイ」。足は短く馬体は筋肉モリモリすぎのスーパーマッチョで父親の「ロイヤルアカデミー」とはまったく違うタイプにみえました。
対するヘイリストの父親「スタチューオブリバティー」も同じくエライザパークで南半球シーズン(北半球シーズンは浦河のイーストスタッドさん)をすごしていますので昨日のレースはこのスタッドの種牡馬ワンツーとなったのですが、スタチューの馬体は逆にバランスのとれた見事なものです。

シンガポールのロケットマン、南アのジェイジェイザジェットプレーンそして香港のグリーンバーディーなど現在世界のスプリント界で強豪といわれる馬たちとこのブラックキャビアの対戦をぜひとも観てみたいですがそれは実現するのでしょうか??


 

2011年2月15日火曜日

日本へ渡ったシャトルスタリオン


さて日本の馬産地では各スタリオンステーションでスタリオンパレードが行われている真っ最中ですが、今年もオーストラリアから日本へ渡るシャトルスタリオンの輸送を担当しました。

まずは「コマンズ」
写真はシドニー国際空港で馬運車から降りてくるところですが、この馬は本当に見た目も美しい種牡馬で父はデインヒルで祖母がオクタゴナル(豪種牡馬)の母に当たるエイトカラット。
パッと見てもバネのありそうな馬体ですがオーストラリアのマッチョタイプの種牡馬に見られるようにお尻や後脚あたりの筋肉は見事ですね。


次は「スニッツェル」
2歳時の早くから才能を開花させたスプリンター。
南半球で2歳戦としては最高賞金を誇る「ゴールデンスリッパーS(豪G1)」にはレース前早くから一番人気に支持されていましたが、レース当日はゲートが開く直前にゲート内で暴れ頭部を強く打ちつけ軽い脳震盪を起こしながら走るも優勝を逃すが次の年ムーニーバレー競馬場で行われたオークリープレート(豪G1 1100m)ではテイクオーバーターゲットを破りG1優勝を遂げている。
現役時代管理をしていた厩舎長が「この馬のギャロップはターフの上を浮いて飛んでいるようだった。」と私に話をしてくれたのが印象に残っています。
写真に一緒に移っているのはアローフィールド牧場のスタリオンマネージャー JOSEPH(ジョセフ)です。

最後は「スタチューオブリバティー」
このブログではおなじみスタチューです。今回もメルボルンから成田までの輸送を担当しました。
空港で馬運車から降りジェットストールへ積み込むと私をにおいで確認したのか「お前のことは知ってるよ。」とでもいわんとばかりに知らぬ顔で乾草をムシャムシャと食べ始めました。
オーストラリアでは産駒の1頭、トップスプリンターの「ヘイリスト」が念願の産駒G1初勝利をおさめ、今特にビクトリア州のブリーダーの間では最も人気のある種牡馬の一頭ですね。

2週にわたり3頭の種牡馬をオーストラリアから香港経由で成田まで空輸しましたが、3頭とも輸送中おとなしく慣れた様子でした。
こうして無事に日本へ到着した種牡馬たちはそこから検疫所へ行き必要な検疫期間をそこで過ごします。
その後再び馬運車ではるばる北海道まで輸送された3頭は、今回の各スタリオンパレードで無事皆さんの前にその姿を現したのです。

 

2011年2月11日金曜日

寒ーいニューヨークへ


さてさてすっかり更新が伸びてしまいました。日本へのシャトルスタリオンの輸送2回、米豪国間の輸送2回、シンガポールへ2回と先月は新年早々休むまもなく飛び回っておりました。クライアントの皆様のおかげです。ありがとうございます。

さて2月に入りも今年も行ってきました、ニューヨークへ。
毎年サラブレッドのシャトルスタリオンが北半球へ渡った後、今度はスタンダードブレッド(トロッター)のシャトルスタリオンがオセアニアから米国へと帰っていきます。

フェデエックス社さんのMD11をチャーターしメルボルンで24頭、そこからニュージーランドへ渡りオークランドからさらに23頭を積み込みさて出発です。
大掛かりな輸送のため私たちプログルーム9人の他獣医1人の計10人で輸送を担当しました。
しかし多頭数、相手も種牡馬となると馬の扱い、馬用ストールの使用法その他が普段とは異なるためより神経を使います。

ホノルルを給油のため経由しまずはロスアンジェルスへ。ここで8頭の馬を下ろし最終目的地のスチュワート空港(N.Yから北へ100kmほどのニューバーグ市にあります)へ向かいましたが、道中は前々日から続くアメリカ東部全域に広がるスノーストームの影響で無事に着陸できるのかどうか心配でした。

無事に到着するとそこは一面の雪世界。
真夏のオセアニアからやってきた馬たちは、その寒さと外の景色にさぞかし驚いたことでしょう。
飛行機からストールを下ろし空港隣にある検疫所まで全頭を無事馬運車で運び終えるとメルボルンを出発してから約35時間が経過していました。
次の日も輸送熱などを発症した馬は一頭もいなかったということでまずは一安心。
これだけの頭数を長時間輸送しこの結果はほぼ奇跡。これも経験豊かなチームのおかげといえますね。

心配していた天候も回復しJFK国際空港からの旅客機も予定通りということで、再び真夏のオーストラリアへと帰途についたのでした。

2011年1月10日月曜日

謹賀新年 海を渡るシャトルスタリオン(2)


明けましておめでとうございます。
私の地元ブリスベンではとにかく雨、雨、雨の毎日で、QLD州に住み始めてから17年間こんなに雨の多い夏は経験したことがありません。
州の各地ではFLOOD(洪水)による被害がひどく、新年に入ってからも止むことなく振り続ける雨のため現在もその被害はさらに深刻化しています。

さてクリスマス前に自国へそれぞれ戻っていったシャトルスタリオンたちですが、今回はヨーロッパへ帰っていった種牡馬たちの様子をその中から何頭かピックアップしてお伝えします。



「HIGH CHAPARRAL ハイシャパラル」
今南半球で最もホットなスタリオンといえるでしょう。かの有名な「So You Think」の父親ですが産駒は特に大レースに強く多くの重賞勝ち馬を出しています。それほど大柄ではありませんが、とてもアスレティックなタイプです。


「SO YOU THINK」
ご存知オーストラレシアのチャンピオンホース「So You Think」です。種牡馬ではありませんがスプリングカーニバル後にクールモアグループへの売却が発表され、今後はアイルランドへ渡りA.オブライエン調教師の下で調教されることになりました。売価価格はA$60M(約50億円)とも言われていますが凱旋門賞への挑戦も視野に入っているようで今年の秋の凱旋門賞がとても楽しみです。


「ORATORIO オラトリオ」
現役時代は2歳時、3歳時ともにG1を勝ち種牡馬としてもクールモア期待の一頭ですが、南半球では初年度産駒から早速G1勝ち馬を出しています。彼は3年前に始めてシャトルで来豪し対面しましたが、みるからにバネのありそうな馬体で、この資質が産駒に伝わればきっと走ってくれることでしょう。

「DYLAN THOMAS ディラントマス」
20世紀の偉大なウェールズの詩人から名を継いだ凱旋門賞馬。3歳時また古馬となってからもキングジョージなどあわせて計6つのG1を勝ちヨーロッパのチャンピオンホースに選らばれていますが、4歳時には「ワールドチャンピオンホース(タイムフォーム132)」に選出され「偉大な種牡馬「デインヒル」の最高傑作の一頭となりました。
  

2010年12月25日土曜日

メリークリスマス!! 海を渡るシャトルスタリオン(1)

 
 今年もあと残り数日となりましたがオーストラリアではクリスマスホリデーシーズン一色です。
私たちにとってこのシーズンは、北半球からやってきたシャトルスタリオン(種牡馬)たちがそれぞれのお国へと帰って行く時期で、今年も21日にアメリカ便、22日にヨーロッパ便がシドニーを出発しました。

 輸送に携わる私たちにとって世界でも名高い種牡馬たちをしかも12,3頭まとめて無事目的地まで運ぶというのは大変責任の伴う仕事ではありますが、携わる関係者皆で協力し合いチームワークのもと馬たちにとってなるべく負担の少ない最善な輸送を行うよう心がけます。

 まずはアメリカへ渡っていった種牡馬の中から何頭かピックアップして写真をのせます。



「ALL AMERICAN」
 デビッド・ヘイズ調教師(豪)のもと2歳時からその非凡な才能を見せ、本当ならもっと大きなレースを勝っていてもおかしくなかったレッドランサム産駒のオールアメリカン。今は種牡馬としてオーストラリアのアローフィールド牧場にけいようされていますが、今回オーストラリア生産、調教馬として始めて米国へシャトルされることになりました。



「BIG BROWN ビックブラウン」
ケンタッキーダービーでの圧勝は今でも記憶に新しいですが、今回始めて生で目にすることになっていたので対面をとても楽しみにしていました。写真ではIDチェック(身体照合検査)のひとつで上唇の裏にある刺青(リップタトゥー。米国のすべての競走馬にいれられています。)をAQIS(オーストラリア政府農政局)の獣医さんがチェックしているところです。

「MORE THAN READY」
米国でも豪国でも産駒がよく走っていますヘイロー系種牡馬のモアザンレディーが地上から貨物機の中までの移動の際「そとはどうなってるんだろう?」とばかりに首を伸ばしてジェットストールの外を見ようとしている所です。

「TALE OF THE CAT」
最後はテイルオブザキャット。毎年米国ケンタッキーのアシュフォードスタッドから南半球シーズン中ニュージーランド、オーストラリアへシャトルとして海を渡ってきています。馬の世界に「マイレージ」があるとすればこの馬のポイントは最高に貯まっているはずですね。写真ではジェットストール(馬空輸用ストール)に乗り込む前にちょっと外を眺めているところです。

 
さあ今週は有馬記念。ローズキングダムの出走取り消しが残念ですが、「グランプリ」にふさわしい好レースを期待したいですね。

2010年12月15日水曜日

香港国際競走回顧 マレーシアから

 

再びマレーシアへ来ています。メルボルンから2頭の競走馬と3頭のエンデュランス競技用アラブを空輸しましたが、以前にもお伝えしたようにメルボルンークアラルンプール間の空路輸送はほんの8時間ほど、ジェットストール(馬用ストール)への積み込み、積み下ろし、また待ち時間を入れても12時間程度ということで馬にとっても負担の少ない楽な(?)移動のひとつです。(ちなみにシドニーからブリスベンまで馬運車を使った陸送は14時間ほどかかります)



写真は現地へ無事到着し、クアラルンプール空港そばにある検疫所まで移動するために馬運車へ乗り込むところです。もちろん馬によってはストレスを感じやすい馬もおり(競走馬に限らず)一概には言えませんが、これぐらいの空輸になると馬体重の減少や輸送熱の心配もほとんどありません。現地へ到着し、無事馬運車にそれぞれが乗り込んで去っていくと、私たちフラインググルームの仕事もそこで完結しやっと一息つける瞬間です。





さて日曜日に行われた香港国際競走ですが、今年度も海外からの多数頭の参戦があり現地では大変盛り上がったようでした。年々そのレースシリーズの存在感を高めており、世界の競馬産業従事者にとってその年最後のビックイベント(もちろん私たち日本人にとっては有馬記念がそうですが)のひとつとして注目されるようになってきました。

日本からもジャガーメイルとエーシンフォワードの2頭が参戦しましたが、両馬ともよく頑張ってくれました。優勝はなりませんでしたが年々海外からの参戦が増えているこのレースシリーズのレベルを考えれば5着までの入着を果たすだけでも大したものだと思います。こうした経験を積み重ねていくことで調教スタッフもノウハウを身に付け次の海外遠征にきっと生きてくることと思われます。関係者の皆様お疲れ様でした。

今年のこのレースシリーズの中で印象に残ったレースは、「スノーフェアリー」の勝った香港カップ(2000m)とシンガポールの「ロケットマン」がまたもや苦杯を喫した香港スプリント(1200m)です。馬群を縫うようにして後方から一気の追い込みを見せたスノーフェアリーの強さは本物ですね。英愛オークス、エリザベス女王杯、そして香港カップと優勝し今年度の最強牝馬の称号を貰ってもよいでしょう。ただジャパンカップで日本のブエナビスタとの対戦が叶わなかったのは残念です。




そしてロケットマンですがここ一番で勝ちきれないのはどうしてでしょう。ドバイシャヒーン、シンガポール国際スプリントそしてこの香港スプリントとすべて僅差で破れ、関係者もさぞかし悔しい思いをしていることでしょう。どうせのことなら来年はいっそ7Fもしくはマイルのレースに使ってみたらどうでしょう?父親はコックスプレート(約10F)であのノーザリーとサンラインに僅差で敗れたバイカウント(その父Quest For Fame)ですし、ストライドの大きな馬だけにもう少し距離を延長しても十分走りそうです。シンガポールで調教を一緒に見ていた時、高岡調教師も同じようなことをおっしゃっていました。シンガポールのファンそして競馬関係者のためにも来年こそはぜひ大きなところを勝ってほしいですね。



 

2010年12月6日月曜日

ロスアンジェルスからシドニーへ

 昨日のJCD(ジャパンカップダート)は一番人気のトランセンドが見事な逃げ切り勝ちをおさめましたが、何と言っても外国からの参戦が一頭もいないというのは少し寂しいような気がしました。それが理由かどうか、今年のJCDがファンの間でも興味が低かったことは、馬券の売り上げ、入場人員も昨年度と比べ2割ほどダウンという結果が示しているような、、、、

 「ジャパンカップダート」と名前が付いている以上、ファンとしては多くの外国馬に来日して参戦してもらいたいですね。

さてドバイへの輸送を終えた後、次の日にエミレーツの旅客機でドバイからロスアンジェルスへ移動し次はロスアンジェルスからシドニーまでの5頭の乗用馬の空輸を担当しました。

 通常種牡馬や現役競走馬以外の馬の輸送は5,6頭であれば一人で担当することが多いのですが、今回はフェデエックス社さんの貨物機で輸送ということでルール上二人のプログルームが添乗する必要があり、ロスをベースにしている同僚のフランス人グルームと二人で輸送を担当しました。
 
 写真からも分るようにFXの貨物機(MD11)は中が本当に狭く、エアストール(馬用ストール)と貨物機内の内壁の狭いスペースが唯一の移動用空間です。


 次の写真は経由したホノルル空港の貨物倉庫内で待機して馬の体調チェックや給水を行っているときのものですが、ハワイの青い空とさわやかな海からの風が何とも心地よく、長い貨物機内での滞在から一時開放された私たちグルームも、ここぞとばかりフレッシュな空気を思いっきり吸い込み、手足を伸ばしておきます。

 こうしてシドニー国際空港まで計21時間の空輸を経て到着した5頭の馬たちは、そこから馬運車に乗り込みシドニー郊外の動物検疫所へと無事に移動していきました。