2010年12月25日土曜日

メリークリスマス!! 海を渡るシャトルスタリオン(1)

 
 今年もあと残り数日となりましたがオーストラリアではクリスマスホリデーシーズン一色です。
私たちにとってこのシーズンは、北半球からやってきたシャトルスタリオン(種牡馬)たちがそれぞれのお国へと帰って行く時期で、今年も21日にアメリカ便、22日にヨーロッパ便がシドニーを出発しました。

 輸送に携わる私たちにとって世界でも名高い種牡馬たちをしかも12,3頭まとめて無事目的地まで運ぶというのは大変責任の伴う仕事ではありますが、携わる関係者皆で協力し合いチームワークのもと馬たちにとってなるべく負担の少ない最善な輸送を行うよう心がけます。

 まずはアメリカへ渡っていった種牡馬の中から何頭かピックアップして写真をのせます。



「ALL AMERICAN」
 デビッド・ヘイズ調教師(豪)のもと2歳時からその非凡な才能を見せ、本当ならもっと大きなレースを勝っていてもおかしくなかったレッドランサム産駒のオールアメリカン。今は種牡馬としてオーストラリアのアローフィールド牧場にけいようされていますが、今回オーストラリア生産、調教馬として始めて米国へシャトルされることになりました。



「BIG BROWN ビックブラウン」
ケンタッキーダービーでの圧勝は今でも記憶に新しいですが、今回始めて生で目にすることになっていたので対面をとても楽しみにしていました。写真ではIDチェック(身体照合検査)のひとつで上唇の裏にある刺青(リップタトゥー。米国のすべての競走馬にいれられています。)をAQIS(オーストラリア政府農政局)の獣医さんがチェックしているところです。

「MORE THAN READY」
米国でも豪国でも産駒がよく走っていますヘイロー系種牡馬のモアザンレディーが地上から貨物機の中までの移動の際「そとはどうなってるんだろう?」とばかりに首を伸ばしてジェットストールの外を見ようとしている所です。

「TALE OF THE CAT」
最後はテイルオブザキャット。毎年米国ケンタッキーのアシュフォードスタッドから南半球シーズン中ニュージーランド、オーストラリアへシャトルとして海を渡ってきています。馬の世界に「マイレージ」があるとすればこの馬のポイントは最高に貯まっているはずですね。写真ではジェットストール(馬空輸用ストール)に乗り込む前にちょっと外を眺めているところです。

 
さあ今週は有馬記念。ローズキングダムの出走取り消しが残念ですが、「グランプリ」にふさわしい好レースを期待したいですね。

2010年12月15日水曜日

香港国際競走回顧 マレーシアから

 

再びマレーシアへ来ています。メルボルンから2頭の競走馬と3頭のエンデュランス競技用アラブを空輸しましたが、以前にもお伝えしたようにメルボルンークアラルンプール間の空路輸送はほんの8時間ほど、ジェットストール(馬用ストール)への積み込み、積み下ろし、また待ち時間を入れても12時間程度ということで馬にとっても負担の少ない楽な(?)移動のひとつです。(ちなみにシドニーからブリスベンまで馬運車を使った陸送は14時間ほどかかります)



写真は現地へ無事到着し、クアラルンプール空港そばにある検疫所まで移動するために馬運車へ乗り込むところです。もちろん馬によってはストレスを感じやすい馬もおり(競走馬に限らず)一概には言えませんが、これぐらいの空輸になると馬体重の減少や輸送熱の心配もほとんどありません。現地へ到着し、無事馬運車にそれぞれが乗り込んで去っていくと、私たちフラインググルームの仕事もそこで完結しやっと一息つける瞬間です。





さて日曜日に行われた香港国際競走ですが、今年度も海外からの多数頭の参戦があり現地では大変盛り上がったようでした。年々そのレースシリーズの存在感を高めており、世界の競馬産業従事者にとってその年最後のビックイベント(もちろん私たち日本人にとっては有馬記念がそうですが)のひとつとして注目されるようになってきました。

日本からもジャガーメイルとエーシンフォワードの2頭が参戦しましたが、両馬ともよく頑張ってくれました。優勝はなりませんでしたが年々海外からの参戦が増えているこのレースシリーズのレベルを考えれば5着までの入着を果たすだけでも大したものだと思います。こうした経験を積み重ねていくことで調教スタッフもノウハウを身に付け次の海外遠征にきっと生きてくることと思われます。関係者の皆様お疲れ様でした。

今年のこのレースシリーズの中で印象に残ったレースは、「スノーフェアリー」の勝った香港カップ(2000m)とシンガポールの「ロケットマン」がまたもや苦杯を喫した香港スプリント(1200m)です。馬群を縫うようにして後方から一気の追い込みを見せたスノーフェアリーの強さは本物ですね。英愛オークス、エリザベス女王杯、そして香港カップと優勝し今年度の最強牝馬の称号を貰ってもよいでしょう。ただジャパンカップで日本のブエナビスタとの対戦が叶わなかったのは残念です。




そしてロケットマンですがここ一番で勝ちきれないのはどうしてでしょう。ドバイシャヒーン、シンガポール国際スプリントそしてこの香港スプリントとすべて僅差で破れ、関係者もさぞかし悔しい思いをしていることでしょう。どうせのことなら来年はいっそ7Fもしくはマイルのレースに使ってみたらどうでしょう?父親はコックスプレート(約10F)であのノーザリーとサンラインに僅差で敗れたバイカウント(その父Quest For Fame)ですし、ストライドの大きな馬だけにもう少し距離を延長しても十分走りそうです。シンガポールで調教を一緒に見ていた時、高岡調教師も同じようなことをおっしゃっていました。シンガポールのファンそして競馬関係者のためにも来年こそはぜひ大きなところを勝ってほしいですね。



 

2010年12月6日月曜日

ロスアンジェルスからシドニーへ

 昨日のJCD(ジャパンカップダート)は一番人気のトランセンドが見事な逃げ切り勝ちをおさめましたが、何と言っても外国からの参戦が一頭もいないというのは少し寂しいような気がしました。それが理由かどうか、今年のJCDがファンの間でも興味が低かったことは、馬券の売り上げ、入場人員も昨年度と比べ2割ほどダウンという結果が示しているような、、、、

 「ジャパンカップダート」と名前が付いている以上、ファンとしては多くの外国馬に来日して参戦してもらいたいですね。

さてドバイへの輸送を終えた後、次の日にエミレーツの旅客機でドバイからロスアンジェルスへ移動し次はロスアンジェルスからシドニーまでの5頭の乗用馬の空輸を担当しました。

 通常種牡馬や現役競走馬以外の馬の輸送は5,6頭であれば一人で担当することが多いのですが、今回はフェデエックス社さんの貨物機で輸送ということでルール上二人のプログルームが添乗する必要があり、ロスをベースにしている同僚のフランス人グルームと二人で輸送を担当しました。
 
 写真からも分るようにFXの貨物機(MD11)は中が本当に狭く、エアストール(馬用ストール)と貨物機内の内壁の狭いスペースが唯一の移動用空間です。


 次の写真は経由したホノルル空港の貨物倉庫内で待機して馬の体調チェックや給水を行っているときのものですが、ハワイの青い空とさわやかな海からの風が何とも心地よく、長い貨物機内での滞在から一時開放された私たちグルームも、ここぞとばかりフレッシュな空気を思いっきり吸い込み、手足を伸ばしておきます。

 こうしてシドニー国際空港まで計21時間の空輸を経て到着した5頭の馬たちは、そこから馬運車に乗り込みシドニー郊外の動物検疫所へと無事に移動していきました。